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ごった煮短篇集【裏】

第2章 僕のヒーローアカデミア・ホークス


始め視界に映った時は、ファットガムのファンかと思った。例の黄色い大きなパーカーは目を惹く。
だが、ここは街中でもなければファットガムその人の家でもなく、ホークス自身の家の中だ。自分の他には先ほど風呂からあがったであろう彼女しかいない。

「なまえ」

呼ぶとすぐに振り返り、眩しそうに目を細めて嬉しそうに笑みをこぼす。かわいらしい。
しかし今はそうではないのだと頭をかき、だぼつくパーカー一枚を羽織っただけの彼女へ指を突きつけて問いかけた。

「それ、どうしたの? サイズ大きいんじゃない?」

「あ、これ? ファットさんに貰ったの」

いいでしょ! と満面の笑みで袖を引き、むささびのように開いてみせる。引っ張られたことで服の裾が持ち上がり、肉付きのいい脚が更に露わになる。一瞬ファットガムに感謝しそうになったのを思い留まり、大きく息を吐いてそれで? と続きを促す仕草をする。
なまえはこれで説明は全部だというように首を傾げ、何を付け足せばいいのだろうと不思議そうな表情のまま、思いついた事を口にした。

「ホークスのはないよ」

「俺のはいいよ」

「お古だけどね、破れたり汚れたりしてないのコレしかないんだって」

「それをなんで君が貰ったの?」

「えっと……ファットのパーカーかわいいなって思ってたし、大きいから寝る時締め付けがなくていいかなって思ってて。もしよかったらほしいなーって言ってたんだ」

「へぇ。まぁ確かに、俺のは向かないか」

「ホークスのはホークスのでかっこいいと思うけど、寝る時には向かないかもね」

そういうことね、と一応の納得はしてみせてゆっくりとなまえのもとへ近づきながら、背中の羽の具合を確かめるように何度か開いては閉じを繰り返す。変わらず身体は良好で、すぐにでも任務に赴けるぐらいメンテナンスはバッチリ。
目の前には、他の男の着ていた服を身に纏うなまえ。背丈はそこまで変わらないが、羽の威圧があるのか少し不安そうな顔でもってホークスを見上げる。あまり怖がらせることはしたくもないし、すきでもないが、今回はちょっとばかり我慢をしてもらおう。欲しいものはどうしても欲しいなんて、みんな心の底では思っていることだ。表層に出ないだけで、いつ垣間見せるかわかったものではない。
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