第2章 僕のヒーローアカデミア・ホークス
気持ちよさげに目を細め、なまえの匂いを感じながらシーツにズブズブと身体が沈んでいく。仕事の疲れもたたり、眠ってしまいそうになるのを堪えて身体を引きずるようにしてなまえの側に近づく。
すぐに身体が冷えないように自身の腕で抱きすくめると、余韻のせいかぴくんと肩が揺れて、鼻から抜ける声が艶かしい。
また元気にさせる気かと小突いてやりたくなる。
ホークスの胸に顔を押し付け深く深呼吸をしていたなまえが、不意に顔を上げる。
近くにある瞳にはホークスが映っている。
「私の一番は、いつだってホークスだよ」
「……え?」
真っ直ぐな目で何を言うのかと思えば。
「ヒーローの一番も、隣にいてほしい一番も、ご飯食べたい一番も、何かを伝えたい一番も、こうして一緒にいたい一番も、全部の一番はホークス」
「一番は、俺には合わないよ」
「それでも、私の一番になっちゃったの」
仕方ないよねぇ、なんて唇を尖らせて言う彼女が心から愛おしい。
一番なんてとんでもなかった。自分としては興味というものがなかった。自分より周りが一番だった。
それでも、自分を一番に選んでくれる人がいる。
「……それはまた、面倒そうだねぇ」
「ちょっと、何それ!」
むぅ、と怒り出すなまえに笑う。
つられて、彼女も笑う。
こんな一番であれば、いくらでもなってもいいなと思う。
奢りかななんて、柄にもなく思ってみたりした。
……end……