第9章 みんなの王子様
カラ松「、最近元気ないな。大丈夫か?」
部活の帰り、家までの道のりを歩きながら、カラ松くんが心配そうな顔で言った。
やっぱり優しいな……このひとは。
「ううん、何もないよ。ちょっと疲れてるだけだと思う」
カラ松「そうか……ちゃんと寝てるのか?」
「うん、大丈夫だよ」
そう答えて、繋いだ手にぎゅっと力をこめる。
カラ松くんの手は、大きくてあったかい。
わたしのとは全然ちがう、ごつごつしていて男の子らしい手だ。
「そう言えば、大会の劇の役、決まったね」
カラ松「ああ……そうだな」
今回の大会で、わたしたちの部は、いばら姫をやることになった。
うちの部は、お姫様と王子様が登場するような童話を題材にすることが多い。
それは、かっこいい王子様が、カラ松くんのハマり役だから。
だから、王子様の役は、必然的にカラ松くんに決まる。
「さすが、カラ松くん」
カラ松「でも、どうして相手役がじゃないんだろう。いつもがいいって推してるのに」
「そんな……わたしに主役なんて無理だよ」
ちなみに、お姫様役は、いつも3年生の部長がやる。
美人で、色白で、スタイルも良くて、全校から人気のある女の先輩だ。
わたしだって、本当は主役をやってみたい。カラ松くんの相手役をやりたい。
でも、わたしなんかが部長に敵うわけがないから……