第8章 たすけて
本当は、たすけてって言いたかった。
わたしの中にあるものを、ぜんぶ吐き出してしまいたかった。
けれども、チョロ松くんだって6つ子のひとりだ。
きっと、話したら、兄弟に何かしらアクションを起こしてしまうだろう。
それは……絶対にダメだ。
わたしは、しばらく黙ったまま、チョロ松くんの腕の中で涙を流しつづけた。
そうしているうちに、気持ちも少しずつ落ち着いてきた。
「チョロ松くん、ありがとう」
チョロ松「ううん。何があったかは分からないけど、あまり溜め込みすぎないでね」
「うん……」
わたしが俯き気味になりながら頷くと、チョロ松くんは、ふたたびわたしの頭をぽんぽんと撫でてくれた。
その手があったかくて、優しくて、なんだか眠くなってきた。
チョロ松「…眠くなってきた?」
「うん……安心したら眠くなってきた」
チョロ松「部屋に戻る?」
「……うん。そうする。ごめんね、付き合わせちゃって」
チョロ松「大丈夫だよ」
わたしが立ち上がろうとすると、チョロ松くんが手を貸してくれた。
チョロ松「僕、トイレ行ってから寝るから」
「あ、うん…」
チョロ松くんは、わたしを階段の下まで送ってくれた。
階段をのぼり、下にいるチョロ松くんを振り向くと、
彼は、ちょっぴり寂しそうな顔をしていた。