第6章 せめて…
一松くんが帰ったあと、わたしは、なんとなくこのまま家に帰る気にはなれず、ふらふらと校内をさまよっていた。
図書室に行って本でも読もうかな…
それとも、屋上で風に当たろうかな…
そんなことを考えながら、廊下を歩いていると。
???「……あれっ?ちゃん?」
背後から声がして、わたしは立ち止まった。
くるりと後ろを振り向けば、そこには、学ランの下にピンクのパーカーを着た男の子。
「トド松くん…!」
トド松「わーっ、ちゃんに会っちゃった! ちょうど会いたいなーって思ってたところだったんだよ♪」
トド松くんは、きゅるんと可愛い笑みを浮かべた。
今日も今日とてあざとい……
トド松くんは、カラ松くんたち6つ子の一番末っ子。
1年生のときに同じクラスで、今は、1つお隣のクラスだ。
トド松「ねえ。こんなところで何してるの? 部活の帰り?」
「ううん、今日は部活は休み。でも、なんとなく真っすぐ家に帰る気になれなくて……」
トド松「そうなんだ」
「そういうトド松くんは? 今日はどうしたの?」
トド松「僕は、先生に呼び出されちゃって。授業中にスマホいじってるのがばれちゃった」
トド松くんは、てへっ、とばかりにぺろりと舌を出した。
そのとき、トド松くんの学ランのポケットから、何やら今流行りの音楽が鳴った。
トド松「あっ……と、ちょっとごめんね」
トド松くんは、ポケットからスマホを取り出し、それを耳にあてた。
トド松「あー、あかりちゃん? んー、ごめんごめん。スマホ先生に没収されちゃってて。……え? そうなの? うーん、じゃあそうしてもらおうかな」
……あかりちゃん? 誰だろう?
トド松「うん、じゃあそういうことで! またねー」
「……電話、彼女さん?」
電話を終えたトド松くんに、たずねる。
すると、トド松くんは、首を横に振った。
トド松「そんなわけないじゃん。彼女じゃないよ」
そういえば、トド松くんって、こんなに女友達多いのに、ぜんぜん彼女つくらないよね…
なんでなんだろう。