第11章 鬼さん、こちら。✔
「蛍は俺の正式な継子となったのだから、鬼の討伐任務が入れば連れて行くこともできる」
「本当っ?」
「ああ。だが鬼を滅する仕事だ。目覚めの良いものではないかもしれないぞ」
「大丈夫。ちゃんと覚悟してる」
私は鬼殺隊の剣士じゃないけど、此処で鬼殺隊がなんたるかは十分学んだからそれなりに理解はしてるつもりだ。
鬼だからって、杏寿郎達のしていることを邪魔するつもりもない。
ただ、自分自身の目で見てみたいとずっと思っていた。
他人に聞かされるだけの情報を呑み込むんじゃなくて。
私自身の、目と耳と頭で。
「ならば問題ないな。お館様も許可して下さるだろう」
ふ、と杏寿郎の表情が和らぐ。
「次の討伐任務では、蛍も連れて行こう」
「本当!? ありがとうっ」
やった!
思わず万歳すれば、困ったような顔で笑われた。
「遠足ではないぞ?」
「うん。わかってるよ」
でも嬉しくって。
人々が"鬼"と呼び恐れている存在の姿を、ようやく見られる。
初詣の時に出会った妓夫太郎達も鬼だったけど、あの時は鬼"だけ"でしか関われなかった。
鬼と人。その関係性を間近で見ることができるんだ。
そして討伐に向かうということは、鬼殺隊本部の外に出るということ。
初詣では一度許可されたけど、あれは神社という限定された場所だけの往復だった。
外の世界を歩いて回れる。
それが何より嬉しい。
「蛍が隣にいると此処が鬼殺隊であることや、俺が柱であることを時折忘れてしまうな…」
「迷惑?」
「いや。よもやこの土地でそんな時を過ごせるとは思わなかっただけだ。俺は、嬉しい」
「…そっか」
穏やかな顔で笑う杏寿郎に、自然と私の頬も緩む。
それが本音なら、私も素直に嬉しいと思う。