第11章 鬼さん、こちら。✔
「これは菊池も納得した上での処遇。あいつを気にかけてくれるなら、その立場を選んだことも呑み込んでやってくれないか」
「…うん」
私がどうこう言える立場じゃないし。
「まぁそう暗くならずとも、偶に本部に顔出しに来るでしょうから! 永遠の別れじゃないですし。大地は繋がっていますからね」
そう、だ。
前田さんの言う通り。踏みしめるこの地は繋がっている。
そんなことで簡単に解決できる問題じゃないけど…時間はかかるかもしれないけど。
後悔をした菊池さんなら、また、いつか。
顔を合わせられるかもしれない。
「蛍。そろそろ帰るとしよう」
「はい」
偶然だろうけど、見計らったように声をかけてくる杏寿郎に、その場の空気が変わる。
「隠の諸君も世話になった。全て大事に食させて頂こう」
「いえ、こちらこそ。此処までご足労頂きありがとうございました」
「頂く者として当然の行為だ。そして前園氏!」
「…あ、私ですか? 前田です」
「前田氏! 蛍の袴の色形が決まったら、まずは一度俺に見せて貰いたい!」
「形、ですか? それならば私にお任せ下さればぜひ」
「見せてもらいたい!!!」
「あ、ハイ」
「…オレもこいつ見張っておきますんで」
「後藤?」
「うむ! それは心強いな!!」
いつものハツラツとした杏寿郎の声と空気に、後藤さん達の声も幾分明るくなった気がする。
このあっという間に流れを変えてしまうところが、杏寿郎の凄いところだなぁと度々思う。
「──ではまた!」
「はい。蛍ちゃんも気軽に来てくれよ。うちでは会えるの楽しみにしてる奴らがいるからさ」
「うん、また来るね。…宇髄さんも、奥さん達によろしく伝えて下さい」
「ほんっとに好きだなうちの嫁」
「ほんっとに大好き。贅沢者ですね」
あんな美人を三人も娶れるなんて。
一人だって奇跡のようなものなのに。
「あ〜…わかったわ。お前が俺に偶に辛辣な理由」
やっとですか。