第37章 遊郭へ
遊郭の地下に張り巡らされた、モグラ穴のような空間。
ただし人間程の大きさのモグラでしか作れないような巨大なその地下空間に、伊之助はいた。
炭治郎が堕姫と遭遇する少し前、伊之助は鋭い体の感覚を駆使し、潜入していた荻本屋の床下に巨大な穴を見つけ出していた。
体中の関節を外して狭い穴の中もモグラのようにぐねぐねと潜り進み、そこで見つけたのが意思を持つ不気味な帯と、その帯に捉えられた数多の人間。そして善逸と宇髄嫁であるまきをと須磨だったのだ。
「オイィィ! 祭りの神テメェ!! ミミズ帯共が穴から散って逃げたぞ!!」
意思ある帯は強かった。
何せぐねぐねとしなやかに伸縮するそれは刀では容易く斬れないのだ。
そんな緊張の空気を一層したのが、伊之助が怒鳴る先に立つ宇髄天元。
彼の登場と共に帯は全て斬り刻まれ、帯の中に捕らえられていた人間も全て戻ってきた。
ただし帯は斬られても死んだ訳ではなく、するすると切れ端は漂うように飛び、天元が開けた天井穴から外へと飛び出していってしまった。
「うるっせぇえ! 捕まってた奴ら皆助けたんだからいいだろうが!! まずは俺を崇め讃えろ話はそれからだ!!!」
珍しくまともな罵声を飛ばす伊之助を、それ以上の罵声で跳ね返す天元は通常運転。
その威勢と柱としての実力を目の当たりにした伊之助は、これまた珍しくびくりと体を震わせ押し黙った。
「て、天元様! 早く追わないと被害が拡大しますよ!」
「野郎共追うぞついて来い!!」
それもまきをの忠告でがらりと天元の姿勢も変わる。
天元がこの巨大な地下通路を見つけたのは、ほんの数分前。切見世と呼ばれる最下級の女郎屋で、雛鶴を見つけた後のことだった。
自らに毒を盛り、遊郭からの脱出を図った雛鶴。
しかし既に堕姫から目をつけられていた雛鶴は、切見世に住まう間も異能帯に監視され続けていた。
逃げようにも逃げられず、自らに盛った毒を解毒することもできず。立ち往生だった雛鶴に解毒薬を飲ませ、遊郭を出るよう指示したのは天元だ。