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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第4章 柱《壱》



 月に一度。闇のように真っ黒な朔月の夜になると胡蝶しのぶが顔を出す。
 それと同じに、定期的に此処へ顔を出しに来る者がもう一人いる。

 最初は鬼ということで檻の中の動物のように、色々な人間に興味本位に観察された。
 冨岡義勇が、まだ私のことは鬼殺隊の一部の者しか知らないと言っていたから多分上層部の者達なんだろうけど。
 とにかくその延長線上の気紛れかと思っていたけれど、その男は飽きもせず何度も足を運んできた。

 此処へ来ては色んな話をしていく。
 自分のことや鬼殺隊のこと。
 その目的が胡蝶しのぶのようにはっきりとはしていなくて、よくわからなかった。

 三度目の訪問で何故此処へ来るのかと問えば、「ようやく口を利いてくれた」と的外れなことを喜んでいた。
 そして「鬼のことが知りたいから」と真っ当な理由を述べられた。

 理由はわかった。
 真っ当だとも思った。

 だけど。


「鬼の少女よ! 今宵も話をしようか!」

「お帰り下さい」

「む!?」


 最近来過ぎじゃないのか。
 前は胡蝶しのぶと同じ月に一度程度だったのに、私が口を利けるとわかったら顔を出す頻度がぐんと増えた。

 そんなに大声を出さなくても。と思うくらいの張った声で夜の挨拶を飛ばしてくるのは、煉獄 杏寿郎(れんごく きょうじゅろう)という男。

 出会い頭早々に丁寧に三つ指を付いて頭を下げて断った。
 というか私「少女」と呼ばれる程、幼くないんだけどな。


「何故だ!?」


 かと思えば大声で問われる。
 ビシビシと痛い程に貫いてくる視線と共に。

 いや、その、話し相手になってくれるのはありがたいんですけど。
 でも、その、耳に痛い程の大声と目に痛い程の視線が、連日続けばちょっとしんどいと言うか。

 一応、私も鬼なので。
 いつ斬られるともわからない帯刀した男と長時間向き合うのは、やっぱりちょっとしんどいと言うか。


「三日前も来ませんでしたっけ?」

「そうだな! あの日は美味い桜餅をお館様に頂いてだな!」

「そうでしたね。目の前で美味しそうに食べて行きましたもんね」


 これみよがしにうまいうまいと連呼しながら食べきってたっけ。
 私は鬼だからそんなもの見せられてもどうしようもないんだけど。

 そのついでに寄ってこ。的な感覚で来るの止めてくれないかな。傍迷惑です。

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