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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第32章 夜もすがら 契りしことを 忘れずは



 愛おしそうに杏寿郎が言葉を紡ぐ程、己の体の淫らさを見つけられてしまったようで羞恥の熱が生まれる。
 なのにそこからじわじわと別の熱が溜まっていくような感覚にも陥るのだ。

 はしたなく快楽に溺れてしまう、その熱に。


「ん"…っぁ…!」


 くちり、と二本目の指が挿入してくる。
 ばらばらに不規則に責めてくる刺激には構えていても、翻弄される他道はなかった。


「杏、寿郎…」

「蛍の" なか"は責めてないぞ。これなら体にそう負担もかからないだろう」

「ふぁ…んっで、も」

「でも、なんだ?」

「そこ…っ」

「気持ちいいんだろう?」


 見透かしたように告げる声色は、愛おしくて堪らないと告げている。


「俺も、気持ちがいい」


 熱を帯びた吐息をついて、静かに杏寿郎の体が覆い被さってくる。
 汗ばむ肌がしとりと重なれば、翻弄される体とは裏腹に心は落ち着いた。


「俺しか知らない蛍だ…可愛い。もっと感じてくれ」

「んく…っ」

「蛍」

「ぁっんッ」


 先程まで首筋に噛み付いていた口は愛を囁き、耳朶に恭しく触れてくる。
 名を呼ばれるだけで蜜壺の奥が、ずくりと濡れるのがわかった。
 きゅっと萎まる後孔が甘く指を締め付ける。

 指だけではない。
 その声が、肌が、心が、優しく蛍の羞恥心を拭い去り快感の海底へと静めていく。
 ゆっくりと、体の隅々まで染み込むように。

 杏寿郎しか知らない、という言葉は正しく真理だ。
 杏寿郎相手だからどんなに羞恥を感じても、それが快楽への回路と繋がってしまう。
 抗いようのない事実なのだ。


「は…っぁんッん…!」


 陰茎に深く貫かれる快楽も知っているはずの後孔は、杏寿郎の指にも応えるように回路を繋げていく。
 甘い声に触れる肌に、一つ一つ杏寿郎を成すものを拾い上げて。

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