第32章 夜もすがら 契りしことを 忘れずは

　浅く、深くと蜜壺の形を探るように二本の指が律動する。
　杏寿郎の言う通り、ししどに濡れた秘部からはぬちゅりと卑猥な音が立つ。
　聞き耳を立てずとも届くその音に、耳を赤く染めながら蛍は身を捩った。


「は…っあッ」

「ほら、脚は開いて。その方がより奥まで届くだろう」


　ひくりとしなる体が、脚が、揺れ動けばやんわりと押さえ込まれる。
　秘部を晒すように大きく腿を開かされるのは羞恥を煽るが、それ以上の快感に蛍は素直に従った。


「んァッあっぅ…杏、寿郎」

「ん？」

「そこ…っ解さなくても、いい、から」


　ぬちゅぬちゅと卑猥な音がより響くのは、それだけ猛る肉棒を受け入れるのに十分潤っている証だ。
　そう告げるように蛍が頸を横に振れど、見下ろす杏寿郎の表情は変わらなかった。


「何故？」

「大丈、夫。いつでも受け入れられる、から」

「うん。これだけ濡れていれば、俺の指も奥まで迎え入れてくれるな」

「ひぅッそ、じゃなくて…っあ！」

「蛍の"入口"だ。俺の子種が欲しいと、ここまで下りてきてくれている」

「ぁあッそ、こ…ッ」


　自分の指では届かない、蜜の奥。
　刺激を求めて花開く子宮口をなぞられて、ぞわぞわと背筋に甘い震えが走った。


「そ、なされると…っ果て、ちゃ」

「ああ、いつだって気をやっていい。俺はそれが見たいんだ」

「杏…ッはンッぁ、あッ」


　猛る杏寿郎の雄を受け入れる為の前戯ではない。
　ただひたすらに蛍の体を愛でたいだけの行為だと気付いた時には、もう止められなかった。
　反射的に腕を掴めば、更にぐっと指の腹が子宮口を押し上げてくる。
　ぐりぐりと入口そのものを解すように刺激されれば、蛍の背は反り嬌声が喉を流れた。


「指…っゆ、びでいっちゃ…ッ」

「俺の指は嫌か？」

「や、じゃな…ッ」

「なら好いていると言ってくれ」

「んッあ…ッすき」

「うん」

「杏寿郎、の指…手、もっ腕、も」

「っ…うん」

「ぜんぶ、すき…っ」