第30章 石に花咲く鬼と鬼
こくこくとひたすらに頷くしかない蛍と巽。
そんな鬼殺隊一行を見守る妖怪が数匹。
「ふっふ、あの煉獄君も蛍ちゃんの前だと形無しじゃのう」
「あんなに人は変わるものなんですね…」
「はぁあ〜…一度でいいけん蛍ちゃんの女の子の姿が見たいとよ…」
愛らしい子供でも見守るかのような微笑ましさを滲ませる目玉親父。
表情は大して変わらないものの珍しいものを見たようにまじまじと観察する鬼太郎。
一反木綿は未だにへにょりと頭を下げて項垂れている。
そんな中、ひくひくと長い髭を震わせて佇む男が一人。
「どーでもいいけどよ…蛍の中身がなんであれ傍から見ればむさっ苦しい光景でしかねーよ…」
男が男に妬いて男の裸を恥じらうなどと。
傍から見ればただの裸男祭りである。と、鼠男は一人重い溜息をついた。
どうでもいいからさっさと着替えて後始末へ取り掛からねばならないのではないか。
吸血木は既にどの木も人間の大きさに戻りつつある。
硬い木肌はやがて本来の肌色を取り戻すだろう。
夢見の悪い悪夢のようなこの景色も、明けていく夜と共に消えるのだから。