第29章 あたら夜《弐》

「あ。千くん狐のお面すごく似合うねっそれにしよう！」

「こ、子供っぽく、ありませんか？」

「ううん。可愛くて恰好良い。古風なお面だから粋に見えるよ」

「じゃあ姉上も付けてください。それなら僕も一緒に」

「私も？　うーん…じゃあ私はこれかな」

「鬼？」

「うん。ぴったりでしょ？」

「ですが…」

「うむ！　迫力ある趣の面だな面白い！　俺が付けよう！」

「兄上っ？」

「杏寿郎が？　でも」

「蛍はこれを付けるといい！」

「これって…お福さん？」

「わ、いいじゃないですか。姉上、羽衣を踊ってくれた時も似合っていましたし」

「でも福面って私には合わない気が…杏寿郎、交換しよう」

「何故俺に福面が似合うと思うんだ。寧ろ逆だろう！」

「そうかなぁ…」

「そうだろうとも！」

「そうですよっ」

「じゃあ槇寿郎さんは？」

「は？」

「父上は…そうだな」

「おい待て」

「あ！　あれとかどうですか。天狗のお面っ」

「待てお前ら！　俺は絶対に付けんからな！！」










「美味ひい！」

「千くんのそれなぁに？　私初めて見た」

「えっと…チョコバナナ、というそうですよ」

「ちょこばなな」

「果物にチョコレイトウをかけたものだそうです」

「あのプリンパフェにも乗っていた？　チョコレイトウって、そんなに形が変わるんだね」

「とっても美味しいですよっ」

「へぇ…私も食べてみたいかなぁ…」

「匂いはどうですか？　はい姉上」

「んー…甘酸っぱい？」

「味はとっても甘いですよ」

「じゃあ少し舐めてみ」

「よくないな！！」

「うわ吃驚した」

「ぁ、兄上…そんなに大声を出さなくても」

「舐めるなど言語道断！　チョコバナナは齧ってしかるべき食べ物だ！！」

「杏寿郎、食べたことあるの？　チョコバナナ」

「ない！！」

「え…でも食べ方を知ってるみたいですし」

「舐めるのは駄目だ！　特に蛍は！！」

「なんで私」

「姉上はそもそも食べられませんよ。だから少しだけ舐め」

「駄目だ！！　見るに耐えない！！！（俺の体が！！！）」

「そ、そこまで言わなくても…ねぇ姉上」

「…これ以上突っ込むのはやめておこう千くん」

「え？」

（よからぬことまで聞いてしまいそうな気がする）