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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第27章 わが情(こころ) 焼くもわれなり 愛(は)しきやし



 縋るように背中に回る両手を、するがままにさせる。
 優しくも止まることなく腰を振り続ければ、耳元で尚も甘い嬌声が響いた。


「ァ…! はぁ、んッ」

「…蛍」

「んぅッ」


 最初は必死に縋り付く姿が愛らしいとばかり思っていたが、次第に余裕がなくなっていくのは杏寿郎も同じだった。
 搾り取ろうときゅんきゅんと締め付けてくる蛍のなかは、腰が砕けそうな程心地いい。
 尚も視界いっぱいに広がる甘い声と蕩けた視線を向けてくる蛍が、浮かぶ汗粒さえ見える距離にいるのだ。

 気付けば片手で蛍の顎を掴み、唇を奪っていた。


「んッ…ふ…! きょ…ぅん…ッ」

「ほたる…ッはァ…」

「は、ンッ」


 歯列をなぞり、上顎を掠め、口内全てを味わわんとするかの如く舌で侵していく。
 漏れる嬌声すらも、飲み込むように。

 苦しげに吐息を漏らしながら、縋る蛍の手に力がこもる。

 上の口では激しい接吻を交え。
 下の口には優しく欲の肉棒で蜜を荒らす。

 小さな部屋に響くのは、粘着質な体液が混じる音と、貪るような互いの吐息だけ。
 時折奏でられる蛍の甘い声が、一層切なげなものへと変わる。
 打ち与えられるような反応が、小刻みな震えへとも。

 絶頂が近いのだろう。
 体全身で訴えてくる蛍に、尚も杏寿郎は熱心な舌の愛撫を重ねた。

 掴んでいた顎を離し、ゆるりと細い頸を握る。
 片手で簡単に掴まえてしまえる、華奢な頸だ。
 鬼の急所であるその肌を握るようにして指先で撫で擦れば、蛍の目尻にじわりと雫が浮かんだ。


「んん、ふ…あッ」


 鬼であるが故か。
 理由はわからないが、そこを愛でると蛍は小動物のように愛らしくなる。
 鼻の抜ける甘い声は理性を崩し、涙の滲む瞳には目の前のものしか映らない。

 だから頸に歯を突き立てたことにも、一種の快楽を感じていたのだろうか。
 杏寿郎には理由はわかり兼ねたが、探す気もなかった。


「ぁ、も…ッきょぅ…っひ、ぁッ」


 嬌声が更に余裕を失くす。
 高みへと昇りゆく蛍のこの姿こそが、己のすべてだ。

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