第27章 わが情(こころ) 焼くもわれなり 愛(は)しきやし✓
「あァ、あ…っ?」
しかし後孔には、未だ熱い杏寿郎の陰茎を感じたままだ。
戸惑う蛍の目が、その様に驚き見開いた。
前に伸びた杏寿郎の手が、秘部の入口へと何かを当てがっている。
ししどに濡れそぼり抵抗もなく受け入れていたのは、杏寿郎自身ではない。それと似た形をした、作り物の陰茎だった。
「な…ん…ァッ」
「…ここが十二分に濡れているお陰か、痛みはなさそうだな」
「は…ッあ、そ…れ…ッ」
「その界隈では張形(はりがた)と呼ぶらしい。柚霧なら知っているだろう?」
名前も用途も知っている。
男性器を模した玩具のことだ。
月房屋を訪れた客の中にも、それらの道具を好み使う者だっていた。
しかしこんな形で使われたことは、過去一度もない。
「アッは…は…ッ」
息をすることですら苦しい。
大きく仰け反りながら、蛍は必死に空気を貪るようにして口を開き喘いだ。
何せ後孔には、未だ硬く太い杏寿郎自身が埋まっているのだ。
そこへ引けを取らない張形が膣内へと挿入されれば、苦しさと快楽が入り混じるようにして蛍を襲った。
「ゃ…ぁっむり…ッ」
「そうか? 蛍の下の口は、どうにも美味そうに飲み込んでいくが」
「違…ッんアッ」
「こうも抵抗なく、雄を二本も咥えてしまうとはな。随分と淫らな体だ」
「そ、れは…杏、じゅ…っが…ぁ、あッ」
十分に通和散で濡らされた張形に、幸い痛みはない。
しかしその圧倒的な質量は呼吸すら奪うものだった。
前と後ろ、両方から太い陰茎に貫かれる。
いくら無数の客を相手にしようとも、一度に複数の男相手に寝たことはない。
その未知なる体感に、蛍は戸惑い喘ぐことしかできなかった。
言葉にしようとすれば、ゆっくりとだが確実に蜜壺の奥へと狙い押し入ってくる張形に乱される。
声なき声は絞り出すような喘ぎにしかならなかった。
杏寿郎の陰茎のような熱さはない、無機質な道具だ。
なのに体は待ち望んでいたかのように、愛液を溢れさせ迎え入れていた。