第27章 わが情(こころ) 焼くもわれなり 愛(は)しきやし

　それからは、呼吸すらままならない程に責め続けられた。

　掌の形を覚えるまで揉みしだかれた胸は、触れられてもいないのに先端が期待で赤く充血してしまう。
　しかしどうしたって、そこには触れてもらえない。

　ししどに濡れた秘部の周りを、マッサージをするかのように丹念に解される。
　入念な解しの後、ようやく欲しいところに触れて貰えたかと思えば、蜜壺の形を探るようにゆっくりと指の挿入を繰り返されるだけ。

　それでも徐々に声が高く切ないものに変わっていけば、反比例するように責めの手は緩むのだ。

　果てたいのに、果てられない。
　そして、極めつけは。


「は…ッぁ」


　ひたりと、背中を這う生暖かい舌。
　舐め上げられた皮膚は外気に触れて、ひやりと肌寒さを感じて震える。

　首筋、項、肩、背中、腹部に脇腹。
　順次辿るように、杏寿郎の舌が蛍の体の隅々まで味わっていく。
　その至る所に、赤い花弁を散らしながら。

　下半身の足の付け根には触れることなく、腰、腿、と。肌の感触を確かめるように掌で撫で回しては、口付けて舌の愛撫を重ねていくのだ。


「きょ…んッ…じゅ、ろ…」

「……」


　その間、交わす言葉は一切ない。
　ただ燃えるような双眸だけは、片時も逸れずに蛍を見つめている。
　見つめるというよりも、狙いを定めた獣のように、じっと射貫き続けているのだ。

　その視線が、ふと蛍から一瞬逸れた。
　目を止めたのは細い足首。
　上半身を起こして、仰向けに横たわる蛍の足首だけを持ち上げる。


「や…っ」


　易々と持ち上げられた股を開かされて、無防備な蜜口を杏寿郎に晒してしまう。
　羞恥で顔を背ければ、ちぅ、と足首に口付けを貰った。
　己のものだと言わんばかりに、他と同様強く吸い上げられ赤い花弁の跡を刻まれる。

　特に足は念入りだった。
　まるでそこに邪なものがあるように、執拗に足首に花弁を散らしていく。


「ん…ッ」


　足先への愛撫など、ただ恥ずかしいだけだ。
　そう思っていたはずなのに、何度も重ねられる口付けに体は震えた。

　這う舌が足の甲、土踏まずへと辿れば、ぞくりと背筋が粟立つ。