第27章 わが情(こころ) 焼くもわれなり 愛(は)しきやし
「ぁッあ…! それぇ…ッ」
「善いか? ならばそう言いなさい」
「ぁッい…ッいい…っきもち、い…ッ」
杏寿郎を求めた時点で、理性など崩れ去っていた。
指示されるままに、鼻の抜けた声が上がってしまう。
やはり稀血の効果によるものか。弱いところを重点的に責められて、忽ちに愛液が溢れる。
過敏な体は急速に熱を押し上げて、高みへと昇りつめてしまう。
「あ…ッも…!」
声が一層高く戦慄く。
しかし蜜壺のきゅうきゅうと締めつけてくる絶頂の予感を感じ取ると、杏寿郎はぴたりと動きを止めた。
「ぁ…?」
呆気なく抜かれた指に、達し損ねた蛍が戸惑う。
「まだだ」
「な、んで」
「言っただろう。この体は隅々まで俺のものだ。俺がいいと言うまで、気をやることは許さない」
ひたりと、愛液で濡れた掌を蛍の胸元に置く。
見下ろし告げる杏寿郎のその言葉に、蛍は声を失った。
今までそんなこと、一度も言われたことがない。
寧ろ蛍の気をやる様が愛おしいのだと、杏寿郎が一度果てる間に何度も気をやられたことがあるというのに。
「我慢しなさい」
「き…杏じゅ、ろ」
「こちらも触れてやらねばな。物欲しそうに主張している」
「んぁッ」
薄い浴衣では隠しきれない、胸の突起を布越しに強く摘ままれる。
それだけでびりびりと体に電流が走ったように、跳ね上がった。
「ああ、君は胸だけでも気がやれたな」
「っは…だめ…ぇ…今は…っ」
「稀血の所為か? ならば尚の事、抗わなければ。そうだろう?」
左右に袖を引かれて、胸元を露わに浴衣がずり下げられる。
ぴんと主張した胸の突起には触れずに、乳房を握るように両手で揉みしだく。
投げかける言葉は時折優しいものなのに、責めには躊躇がない。
そんなことではまた達してしまいそうになると蛍が頸を横に振っても、見下ろす杏寿郎は感情の一つも見せなかった。
「集中」
体を重ねる度に、何度も聞いた言葉だ。
なのにこの時程、冷たく感じたことはなかった。