第26章 鬼を狩るもの✔
(さて、どうしたものか)
特の付く異端ならば、無惨に報告しなければならない。
蛍のことも勿論放ってはおけない。
だから二人まとめて連れ去ろうと考えていたが、この事態だ。
(このまま凍らせてしまってもいいけど、蛍ちゃんも巻き添えにしてしまうなあ)
鬼であるが故に死ぬ恐れはないだろう。
しかし二人共類稀なる存在故に、どうなるのか予想はつかない。
鬼は鬼を殺すことができる。
だから共食いというものが発生するのだ。
今、蛍は抗えない無防備な状態でテンジの傍にいる。
もし攻撃されて暴走したテンジが蛍を襲ってしまえば、この世界下では童磨も防ぎきれない。
「うーん」
「ッ…おいテメェ!」
「うん?」
「ボーッと突っ立ってる暇があんなら、この腕削るくらいしやがれェ!」
「ああ、ごめんね」
一人で頭を捻っていれば、遠くから実弥が噛み付いた。
互いの戦闘を一時休戦としたのも、この触手の森をどうにかしなければという意思が合致したからだ。
「どうにかしたいのは山々なんだけど、俺の術じゃ大がかり過ぎるかなぁと。その調子で君が少しずつ削っていってくれないかな?」
「はァ!? テメェの方が俺より大技だって言いたいのか!」
「うん」
「ブチ殺す!!」
殺意をみなぎらせる実弥に「ごめんごめん」と苦笑混じりに謝りながら、童磨が緊張感なく片手を振る。
「でもこの中には君の仲間もいるだろう? レンゴク、と言ったかな」
猛々しいその名を思い出すように口にして。
「今の蛍ちゃんだと自力でこの中から出てこれはしないだろうけど、彼なら別だ。そして蛍ちゃんを見放すようなことは絶対にしない。そうだろう?」
「……」
「だったら大丈夫」
実弥の無言を肯定と見て、童磨は閉じた扇を笑う口元に添えた。
「信じてみようじゃあないか。君の仲間をさ」
凡そ悪鬼が口にするには似合わないその台詞に、実弥の眉間に皺が寄る。
それでも唇は真一文字に結んだまま、再び巨大な触手の森を睨み上げた。
外からの守りが強固ならば、叩くは内側からだ。
(あいつは早々死ぬタマじゃねェ)
頼みの綱は炎の同胞ただ一人。
(…任せたぞ、煉獄)