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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第6章 柱たちとお泊まり会✔



 しのぶは、怒りを秘めた赤銅色。
 杏寿郎は、太陽のような猩々緋色。
 蜜璃は、愛らしさの混じる撫子色。
 行冥は、どっしりと強い鉄黒色。

 それぞれが持つ色にはそれぞれの思いや人間性が混じっている。
 ただ義勇の"それ"は、蛍にも判断がつかないものだった。


「理由など詮索するな。確固たるものなどない」

「…はしら、なのに…」

「…俺は柱じゃない」

「なにいって…? はしら、でしょ」

「……」


 思いがけない言葉に問い掛ければ、義勇は今まで開いていた口を閉じた。
 感情の色はわからなかったが、その態度ですぐに悟る。


(あ。駄目だ)


 これ以上の詮索はできない。
 閉じたその口から、言葉の意味を聞けることはないだろう。


「もう行くぞ。この場でそんな格好をしていたら、それこそ胡蝶に殺され兼ねない」

「…ぁ…」


 場を切り替えるように腰を上げる義勇に、言われて気付く。
 感傷に浸っている間に己の体から垂れ流した血は、着ていた寝間着を赤く染め上げていた。
 赤い斑点が付いてしまった散々たる様を見下ろして、蛍は眉を下げる。


「さきに、もどってて…わたしは、このきものをあらっていくから」

「…どう洗うんだ。井戸にでも飛び込む気か」


 義勇の言う通り、引き摺っていた下半身の布は血溜りに落ちて余すことなく赤一色。
 これを洗い落とすと言うなら、水に浸さなければ無理だろう。


「どうにか、する…きょうじゅろうが、かしてくれたものだから…わたしのちでよごせない」


 着物の裾を、きゅっと小さな手で握り込む。
 蛍のその姿に、義勇は微かに息をついた。


「脱げ」

「………は?」

「そのまま着込んでいたら洗えないだろう。脱げと言ったんだ」

「な…んっ」


 最初こそぽかんと見上げていた小さな顔が、忽(たちま)ちに色付く。
 ぶんぶんと無言で頸を横に振る様に、義勇は今度こそわかるように息をついた。


「裸になれとは言っていない。これを着ていろ」

「わぷっ」


 視界を覆う程に大きな布が、ばさりと蛍の頭に落ちてくる。
 何かと見れば紫紺色(しこんいろ)が視界を覆っていた。

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