第23章 もの思へば 沢の蛍も 我が身より✔
「は…っ柚霧……柚霧…ッ」
「ひぁ…っんッあっ!」
しゃりんと、柚霧の頭から滑り落ちるビラ簪。
布団にはらりと舞う髪を見下ろしながら、布団と自らの体で挟み込んで柚霧の逃げ場を失くした。
シーツに爪を立てる手を上から掴むように握ると、幾度も幾度も腰を打つ。
柚霧を通して見つけた快楽への綻びを、広げていくように。
カリを引っ掛けて刺激する後孔の萎まりが、一突きする度に尚も締め付けてくる。
「柚霧…ッ」
自分の為か、柚霧の為か。
ただただ、その名を呼び続けた。
忘れまいと、刻み付けたかった。
「っぅ、く…!」
「っは、ぁあッ!」
腰が砕け落ちる前にと、限界まで張り詰めた欲を柚霧の中に注ぎ込む。
伸し掛かるように覆い被さったまま、杏寿郎は一滴残らず吐き出した。
己の色に染めて、染めて、染め上げて。
もう他の誰のものにもならないように。
「(俺だけの、)──柚霧…」
は、と吐息混じりに零れ落ちる。
彼女を呼ぶ声は、自分でも驚く程に甘く掠れていた。