第23章 もの思へば 沢の蛍も 我が身より✔
「は…っはあ、ァっ…う、」
嬌声とも悲鳴とも取れる声が、柚霧から上がる。
目尻には薄らと涙を称え、悩ましげに眉が眉間に皺を刻む。
膝を抱えていた手は、布団を掴み握るように変わっていた。
奥へ奥へと進もうとすればする程、蜜壺より狭い後孔は侵入を阻んでくる。
杏寿郎もまたきつく眉間に皺を寄せると、奥底まで突き上げたくなる衝動をぐっと抑えた。
(どうにも、きつそうだ…この体制では駄目か)
多少の苦しさはあれど、杏寿郎にとって欲を搾り取ろうとするような後孔は気持ちの良いものだった。
しかし受け入れる側の柚霧はそうはいかない。
抱かれる体位としては、柚霧は無理な体制を取ってはいない。
それでも唇の隙間からは苦しそうな吐息を漏らし、縋るように布団を鷲掴む様は耐えているようにも見える。
柚霧自身が痛みを欲したが、それだけを与えるなど言語道断。
抱きしめたいのに身を屈めれば狭い後孔から、容易く己の欲は抜け出てしまう。
触れられないそのもどかしさに、杏寿郎は考えた。
「柚霧。少し、じっとしていてくれ」
「ぇ?…んッ」
一つに繋がったまま、横たわる柚霧に寄り添うようにゆっくりと左肩から布団に沈む。
隙間のないように、肩から繋がる下半身まで、背後から包み込むように肌をぴたりと触れ合わせた。
「少し、こうしていよう」
「こ…こう、ですか?」
「俺が不甲斐ないばかりに、柚霧に負担ばかりかけさせているみたいだからな…馴染むまでは」
果たしてじっとしていることで、柚霧が楽になるかもわからない。
こんなことなら書物でも人伝でも、もっと深く性知識を学んでおくべきだったと後悔した。
ただ今更後悔したところで後の祭り。
今できる最善は何かと、ない知識を絞って頭を回転させる。
唯一わかっていることは、柚霧が苦痛を感じているということだ。
取り除くことはできなくても、どうにか緩和させられないかと杏寿郎は思案した。
「…私は、痛みでも嬉しいですよ」
「だとしても、だ。俺が柚霧を感じてどうしようもなく満たされるように、柚霧にも出来得るなら俺を感じて心地良くなって欲しい」