第23章 もの思へば 沢の蛍も 我が身より✔
「そこに触れるのは、まだ後だ。もう少しここで気持ちよくなれてから、な」
「…ぁ…っ」
頬に軽く口付けられて、後孔を責めていた指が唐突に止まる。
ゆっくりと引き抜かれると、切ない吐息が漏れてしまう。
物欲しげにも見える濡れた柚霧の瞳に入り込むように身を屈めて、杏寿郎は支えていた背をゆっくりと布団へと静めた。
「加減はわからないが、そろそろ俺も限界が近い。柚霧を、直に感じたいんだ。…いいだろうか」
低く掠れた声は、飢えた獣のようだ。
噛み付きはしないが、理性の下で虎視眈々と喰らう隙を狙っているようにも見える。
そんな獣の目に捉えられて、柚霧は細い頸を嚥下させた。
こくりと唾を飲み込む姿が、頷き迎える様にも見えて。
杏寿郎は笑みを深めると、周りに散らばっていた通和散を数枚手にした。
柚霧を真似るように、口の中で租借し唾液と混ぜ合わせる。
液状化したそれを掌に溜めると、既にいきり立っている陰茎にとろりと塗りたくった。
「柚霧…」
「ん…は、い」
頭を擡げる欲の塊を目にして、柚霧は両膝を揃えると自らの手で膝裏を抱き上げた。
体を横にして、ぴたりと揃えた足を胸元に付くように抱く。
そうすると、杏寿郎の目に濡れて光る秘部から後孔まではっきりと映し出された。
視線を感じてか、ひくりと震える小さな蕾が愛らしい。
そっと腿に触れれば、赤い顔が逃げるように背く。
「顔を見せてくれ。君を優しく抱きたいんだ」
とろりと濡れそぼる亀頭が、後孔に触れる。
獣の目をしながらも本質は変わらない杏寿郎の姿に、おずおずと柚霧は赤い顔を向けた。
濡れた視線が混じり合う。
「いくぞ」と小さく呟いて、杏寿郎はゆっくりと自身を押し進めた。
「ぅ、ん…ッ」
痛みは然程なかった。
後孔も陰茎も十分に濡らしていたお陰で、閊えることなく杏寿郎のものが柚霧を犯していく。