第23章 もの思へば 沢の蛍も 我が身より✔
(確か…こうやって…)
今まで、後孔を使っての自慰行為など一度もしたことがない。
そもそも感じたことも、杏寿郎相手でしかないのだ。
その時、どんなふうに杏寿郎の指は触れてくれていたのか。
思い出しながら、ゆるゆると小さな蕾の入口を撫で回す。
通和散でふやかすように、丹念に塗り込んでいく。
恐る恐ると蕾に指先を押し込めば、つぷりと呆気なく咥え込んだ。
「ぁ…っ」
先程、杏寿郎の指で一度快楽に染め上げられたお陰か。ゆっくりと何度も入口付近を引っ掻くように出し入れすれば、じんとした疼きが生まれる。
「は…ん、ん…っ」
自然と息は徐々に上がっていった。
入口だけでは十分に解れないと、今度はゆっくり指を奥まで埋めていく。
異物が潜り込んでくる感覚は身構えさせたが、杏寿郎に見られているという顔に火が付くような羞恥の事実に、体は不思議と高揚した。
こんな姿をじっと見ないで欲しい。
こんな声をじっと聴かないで欲しい。
そう思えば思う程、後孔の疼きは増すのだ。
「柚霧…どうだ…? 痛みは、あるか」
「っいえ…痛みは、ありません…」
食い入るように見つめていた杏寿郎が、様子を伺うように尋ねてくる。
喉を枯らしたような乾いた声に、柚霧は小さく頸を横に振った。
痛くはない。
通和散のお陰で、すんなりと小さな蕾は指の挿入を許していた。
痛くはないのだ。
ただし。
「では、善くなれているか?」
「っ…わかり、ません…むずむず、する感じ、で…」
杏寿郎に触れてもらった時は、確かに快感を覚えていたというのに。
奥底まで指を飲み込ませても、細い柚霧の指では感じ方もまた変わる。
(触れて、もらったところに…届かない…)
ふぅふぅと息を繋ぎながら、ああでもないこうでもないと後孔を弄る。
自分でするのとしてもらうのとでは、こうも違うのかと柚霧は内心呻った。
これではいつまで経っても、気持ちよくなれる気がしない。
(そうだ。別のところで気持ちよくなれば──)
杏寿郎は、後孔だけでなく胸や秘部にも愛撫を向けてくれた。
同じようにすれば快感を引き出せるかもしれないと、空いた手を秘部へと伸ばす。