第22章 花いちもんめ✔
(…参った)
視線は揺らいでいなかった。
気配もブレなど見せていない。
それだけ蛍も覚悟していたのだろう。
しかし表向きだけでは計り知れない他人の心を、この耳は聴き取ることができる。
それこそが宇髄天元が音柱と謳われる所以(ゆえん)である。
痛手は負わなかったのかとの問いに対し、蛍の心臓は真逆の音を奏でていた。
鬼の心音は人間とは異なる。
しかし長年蛍の音を聴き続けてきたからこそ、その変化に気付いた。
気付いてしまったのだ。
潔白がシロであるならば、今回の蛍には当てはまらない。
十中八九というよりも確信に近い。
「…ありゃクロだ」
擬態化した幼い体の奥底から聴こえてきた、少しだけ欠けたような歪(いびつ)な音。
十二鬼月との間に何かしらあったのだ。
おいそれと口にはできない、何かが。