第6章 柱たちとお泊まり会✔
静かな闇が世界を覆っていく。
木々は眠り、小鳥や鼠は巣へ帰り、ひっそりと静寂が息衝いていく。
そんな世界の眠りと相反して私の体は細胞を広げ、手足を生やし、血液を作り上げた。
ようやく体が全ての再生を終えた頃、用意されていた離れの部屋を出ることを許可された。
「彩千代少女よ! 体は完治したか!」
「うん、多分。まだ少しびっこを引いてるけど」
「そうか。ならば今日の稽古は中止だな!」
「え?」
此処は炎柱のお屋敷。
いつものように訓練時に使う広い道場で杏寿郎に迎えられた。
かと思えば即答で中止だと言われて戸惑う。
昨日の続きをするとばかり思ってたのに。
「あの…ごめんなさい。長々と部屋を借りてしまって…」
「案ずることはない! 彩千代少女の容態を見れば当然の結果だ! 他に痛むところは?」
「びっこ以外は特に…」
「ならばよし!」
いつもの張った声のまま杏寿郎の目が私の頭から足先まで向く。
じろじろと見られてなんだか気まずくなる前に、うむうむと何度も頷かれた。
「実践の結果は宇髄から聞いている。よくぞ柱相手に一矢報 (いっしむく)いた、有り余る結果だ」
「そ、そうかな。単なる偶然のような気も…」
「ほーお。じゃあなんだ、お前は俺が偶然引き分けたと? お前相手に? 偶然?」
余りにあっさりと認められるものだから、なんだか恥ずかしくて。
曖昧に頸を傾げれば隣からネチネチと責められた。
其処にぬっと立っているのは馬鹿でかい壁。
結局昼間一度も戻って来なかった忍者…じゃない宇髄天元。その男だ。
「運も実力のうちだっつの。下手な謙虚なんかすんな、そっちの方がムカつくわ」
言い方は相変わらずカチンとくるものだけど、確かに天元の言う通りかもしれない。
結果は結果だから…杏寿郎もこうして認めてくれているんだし呑み込む方がいいのかも。
言い方はカチンとくるけど。