第15章 情炎 あわひ 恋蛍✔
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「っは…お前いつからそんなに腕上げたよ…!」
「我が継子に負けてしまったのでな…! 修業が足りんと己を叱咤した!」
「お前らしーわっ」
それから一刻。
水浴び前の汗など比較にならない程、全身汗だくになるまで宇髄と稽古を交えた。
最後はただの殴り合いになってしまった気もするが、お陰で体の中にあった熱の燻りは消えた。
やはり頭の切り替えは鍛錬に限るな!
「はー、本部で暴れたのひっさびさだな…」
「うむ…些かやり過ぎた気もするが」
「気の所為だ」
流石に疲労して座り込んだ縁側から、目の前の半分程減った竹林が見える。
目を逸らす宇髄に、この時ばかりは同意することにした。
呼吸技で剣技を交えたからな…此処が屋敷内でなくてよかった。
「ほらよ。水」
「うむ! ありがとう!」
元々鍛錬相手を求めていたのは本当だったのだろう。
手拭いだけでなく水や食料も用意していた宇髄を見れば、俺をからかいに来ただけではなかったとすぐ思い直せた。
それならば邪険にする気もない。
放られた水筒を受け取って喉を潤す。
「これは…っ甘い水だな!?」
「嫁が用意してくれた。レモン水だと」
「檸檬水! なんとも珍妙な!」
「珍妙言うな。お洒落って言え」
「うまい! 薩摩芋水は作れないのだろうか!?」
「なぁ煉獄。好きなもんならなんでもイケる口なのはお前くらいだろうよ。俺様、河豚水は流石に飲めねぇわ…」
「河豚水か! 不味そうだ!」
「おま…っそっくりそのまま返すわその台詞! つか河豚酒があんだろ!!」
不味そうなものを不味そうだと言っただけだろう。
水と酒は別物だ。
薩摩芋水の方が美味いに決まっている!
「蛍に頼めば作ってもらえるやもしれんな」
「だからやめとけって…あいつも流石に俺と同じ顔するぞ」
「そうか? 蛍は俺が食べたいものをよく作ってくれるぞ!」
「へえ。見かけによらず尽くす奴なんだな。あいつ」
「宇髄にどう見えているかわからんが、蛍は働き者だ。自分は継子だからと、家事炊事は全て率先してしてくれている!」
「…ふぅん」
井戸水で冷やした手拭いで改めて汗を拭っていると、その手を止めた宇髄が意味深にこちらを見てきた。
なんだ?