第2章 【忍たま】愛が重くてごめんね【R15】
あの子じゃない。だが、姿は見えないけれど、この声は聴いたことがある。確か学園の子ではなかったと思うのだけれど…意識が朦朧として考えられない。
「喋れないの?もう死んじゃった?」
少しの心配も感じさせない、むしろ楽しげに訊いてくる声に私は答えた。
「…人の死に時を…邪魔しないでもらえません?」
思っていたより声は出なかった。この小さな声は届いたのだろうか。
「ふふ、そんなこと言っていいのかな?私は君を助けれるよ」
「助けなくていいです、私は助かるべきではない」
考えるよりも先に言葉が出た。私は助かるべきではない、そう思う。助かったとしてどうしろというのだ。この世界で私には何のあてもない、あの子達に会うべきではないと知った今では、私に生きる意味なんてない。こんな私にとって生きることすら難しい世界で、何の目的もない私は、ここで死んだ方がいいだろう。
「ここで死んで楽になるつもり?それはただの逃げだよね」
逃げ…そうかもしれない。だって私には何もないのだから。家族も知り合いもいない所に放り出されて、唯一こちらが一方的に知っている子たちはむしろ私を、私たちトリップ者を恨んでいる。救いのないこの世界で私が生きることは、もはや罪なのではないかと思える。死んで楽になることと、罪を持ちながら生きていくこと、どちらがマシだというのか。
「君が死んでも何にもならないけどさー、また次の天女がくるんだよね」
天女…?あぁ、トリップ者か……
「は?」
「あ、まだ生きてた」
「次の天女とはどういうことですか」
そんなの意味がない。私はあの子がまた幸せに笑えるようになるために死ぬつもりだったのに、天女が、あの子の幸せを脅かす者が現れるなんて
「死ねない」
私は飛びそうになっている意識を無理矢理覚醒させた。生きなきゃいけない、あの子の、あの子達のために。