第8章 夏合宿2日目。
「で、どうしたよ。」
部屋に戻る廊下でクロに話しかけられる。
『別に…』
「別に…で済むと思ってんのか。昨日の自主練の時からなんか変だぞお前。」
その通りだから何も言い返せず、私は顔を伏せた。部屋に到着したらしく、クロは足でドアを開ける。
「お前の布団どれ?」
『窓側の1番端っこ』
クロは布団のそばでしゃがみ、私を太ももの上に座らせると片手で布団を敷いていく。
「ほら、敷けたぞ。」
そう言ったクロは私を布団の上に降ろした。
『ねえ、クロ…私、どうしたらいいのかわかんない…』
「何が」
『リエーフと一緒にいるとどうしたらいいのかわかんない』
「はぁ?今まで付き合ってもねーのにいちゃいちゃしてたお前がか?」
日を避けるようにカーテンを引いてくれていたクロが、信じられないって顔して私を見る。敷いてもらった布団に寝転ぶとタオルケットを胸元に引き寄せる。
『うん…なんか、今までは弟…とかペットみたいに見てたのよ。だからどれだけくっついてきてもそこまで意識せずにいれたの…』
「ってことは何か?何かの折に好きって自覚して、意識しちゃったー。ドキドキしすぎて顔見れないーみたいなやつか?」
にやにやと笑いながら私を見るクロに私は布団で口元を隠しながらこくりと頷いた。私の頷きに大げさにため息を吐いたクロは私の隣に座る。
「好きなんなら好きって言ってやればいーじゃねーか。リエーフ喜ぶぜ?」
『でも今まで拒んできたくせにあっさり好きなんて言えない…』
戸惑う気持ちに視線を下げると優しげな手が頬に寄せられる。
なぜ、と戸惑う間もなく暖かな指は目の下の隈を優しくなぞった。
「だったら…俺にしておけよ…」