第8章 夏合宿2日目。
そのあとも、私はできるだけリエーフに話しかないように過ごした。試合の合間のドリンク、タオルを渡す時もそっけない態度。
それか他の人に渡してもらう始末。そのせいか試合を重ねるにつれ、私でさえリエーフのプレーが乱れてきてるのがわかる。
研磨の上げたボールは、リエーフが打ちやすい高さに上げられたが結局空回り。
まずいな…
何かしらフォローをしなければと立ち上がると、暑さからかくらりと大地が揺れ、とっさに壁に手をついた。
昨日寝れなかったからなぁ…
なんて考えていると、すう…と血の気が引く感覚。
やばい…
倒れる前に壁に寄りかかりながらずるずるとしゃがみ込むと、それに気づいたリエーフが一目散に駆けてくる。
「美優さん⁉︎どうしたんですか⁉︎体調悪い?」
『大丈夫…だから、試合、行って?』
「大丈夫な顔してないっす!」
無理やりぐいと顔を上げられ、覗き込まれるとどうしたらいいかわからない。
どうしよう
熱い
『大丈夫だってば!』
とっさに叫び、顔を隠す。
はっとしたがもう遅い。
やっちゃった…
恐る恐る隠していた顔を上げリエーフを見る。
私の瞳に写ったリエーフは今まで見たことない位寂しそうな、傷ついた顔をしている。
そんな顔をさせてしまった罪悪感で余計に顔が見れない。
「美優さん…俺……美優さんに嫌われるようなことしました?」
『ちが…』
「痴話喧嘩はここまでだ。美優、部屋行くぞ。体調悪いんなら寝てろ。」
ぐいと腕を引かれ、クロに立つことを促されたけど、足に力が入らず立てない。
『ごめん…クロ。立てない…』
「…チッしゃーねーなー…」
舌打ち交じりにそう呟くとクロは私を抱っこし、監督のところに向かう。
「こいつ体調悪いみたいなんで部屋連れて行きます。」
「おう。行ってこい。」
『猫又監督…すいません……』
「そう思うんだったら今日はしっかり休んで明日からまた頑張ってくれな?」
そうして私はクロに連れられ部屋に戻った。
リエーフへの罪悪感を胸に宿しながら。