第8章 夏合宿2日目。
合宿2日目、私は朝からあからさまにリエーフを無視している。
朝ご飯はマネージャーちゃん達と食べたし、練習の時もできるだけ顔を合わせないようにした。
『はぁ…』
今は調理室。森然の父兄の方からスイカの差し入れが届いたから切っている最中。
「どうしたんですか?美優さん。」
烏野の仁花ちゃんが私のため息に気づいて声をかけて来る。
『なんでもないよ?』
「なんでもなくないですよねー?」
慌てて顔を上げて否定したけれど、生川の宮ノ下ちゃんがくすり、笑う。
「今朝からあからさまに彼氏避けてますよね?」
『もしかしてリエーフのこと?あれ、彼氏じゃないよ?』
「彼氏じゃない?じゃああの前回の合宿と初日のべたべた加減はなんですか。」
と雀田ちゃん。
「でも灰羽君は完全に好意持ってますよねー。」
と白福ちゃん。
そうだよねー。
そう見えるよねー。
「「「で、どうなんですか?美優さん。」」」
周りの視線が私に集まり、つい、本音をぽろりと零す。
『いや…ね?今までは先輩と後輩…姉と弟って感覚だったから手を繋いだり、ハグされたり、できたんだけど…』
「「「だけど?」」」
みんな食いつくね…
『昨日…ちょっと……弟以上だなって自覚しまして…そしたらリエーフを直視できないというか…なんというか』
「だからヨソヨソしいんですね!」
と大滝ちゃんが言うとみんなしてニヤニヤしながら私を見る。
だからなんでみんな楽しそうなの‼︎
「知ってます?灰羽君、今日機嫌悪いの。」と、大滝ちゃん。
「みんな喧嘩でもしたんじゃないかって気になってますよ?」と、宮ノ下ちゃん。
そんなに⁉︎
すると急に調理室の扉が開き、森然のコーチが顔を出す。
「早くしないとまた試合始まるぞ!切れたやつからでいいから持って行けよー。」
『私切っておくから先に持っていって!』
「「「はぁーい!」」」
切れたスイカを持ち、宮ノ下ちゃん、雀田ちゃん、白福ちゃん、仁花ちゃんが先に調理室を出る。
残った私、大滝ちゃん、清水ちゃんは慌ただしくスイカを切っていく。スイカを切りながら大滝ちゃんが楽しそうに私に言う。
「でも、早く気持ち伝えないと愛想つかされちゃいますよ?」
「うん。同感。」
清水ちゃんまで同意してる…
『ふたりともひどい…』