第7章 夏合宿1日目。
再びコートが動き出す。
赤葦がトスを上げ、木兎が助走をつける。クロが蛍に何かつぶやいたと同時くらい、木兎がぐんっ、と飛んで、打った。
のをクロがタイミングよく向こうのコートに落とした。
「ウェーイ!」
「くっそ‼︎」
嬉しそうなクロと悔しそうな木兎。
流石クロ。前回の合宿から観察してるけど、クロのブロックは合宿メンバー中ピカイチ。試合でもかなりの割合でボールをブロックしている。音駒の部長やるだけのことあるよなぁ。そんなことを考えていたら、こっちを見たクロと目が合った。
「美優、今の黒尾サン格好良かっただろ。惚れた?」
『格好良かったのは認めてあげるけど惚れてはない。むしろ今ので格好良さ半減。』
「美優俺は俺はー!」
『木兎すごいね、スパイク打ったときの振動こっちまで伝わってくるよ。3本の指じゃないのが残念だけど。』
「美優まで!だから落とすんならアゲないで!」
木兎は私に向かって怒っていたかと思いきや今度は蛍に向きを変え、何かを考える。
「やっぱメガネ君さ、『読み』は良いんだけど、こう…弱々しいんだよなブロックが!腕とかポッキリ折れそうで心配なる。ガッ!と止めないとガッ!っと!」
『男子高校生…腕……折れそっ……プフッ』
木兎が蛍に言った言葉が適切すぎて思わず笑ってしまう。
「そこのチビうるさい…」
蛍は私にそう呟くと木兎に向き合い嫌味ったらしく笑顔を作る。
「僕まだ若くて発展途上なんですよ。筋力も身長もまだまだこれからなんで。」
『筋力はともかく身長はもういらないだろ。デカブツ』
「うるさいチビ」
『さっきからチビチビうるさい!』
「でもさー、悠長なこと言ってるとあのチビちゃんに良いトコ全部持ってかれんじゃねーの?同じポジションだろー。」
クロが蛍を挑発してる。
…でも比較対象が日向くんでしょ?確かにジャンプ力や攻撃はすごいかもだけど…それを攻撃に活かすのは9番の影山くん。身長も高くて頭の良い蛍と比較するのは…
「それは仕方ないんじゃないんですかねー。日向と僕じゃ元の才能が違いますからねー。」
反論ではなく笑顔で肯定する蛍に、何か違和感を感じる。
なんだろう。この何かを諦めたような寂しそうな笑顔は。