第7章 夏合宿1日目。
担がれたまま体育館に入ったところでクロが誰かに声をかけた。クロの背中側に頭がある私には誰がいるかわからないけど…
「おー。2人とも集まってんな。」
「黒尾さん…何してるんですか…」
『その声は赤葦!助けてー!』
「黒尾何楽しそーなことしてんの?」
『ちょっと!たぶん木兎⁈何言ってんのよ‼︎いやー!誰か助けてー!』
目を瞑りクロの肩の上で叫ぶと急に自分の体重がかかっていたお腹が苦しくなくなった。そしてぎゅっと何かに包まれる感覚。
汗の香りに混じるフレグランス。
力強い腕。
顔を見なくても、声を聞かなくてもわかる。安心する。
これは、リエーフだ。
「黒尾さん、美優さんに何してるんすか。」
「リエーフ。お前のために連れてきてやったのに…なんか文句でもあるか?」
ゆっくり瞼を開くとなかなか見ないリエーフの怒ったようなイラついた顔と声にクロの挑発めいた声。
「美優さん嫌がってたじゃないですか。」
「じゃあお前、美優連れてこないと上がらないモチベーションなんとかしろよ。」
そう吐き捨てたクロはリエーフの元に私を置いてさっさと木兎と赤葦の元へと行ってしまった。
『リエーフ…もういいから。』
私が呟くとリエーフは私を抱く力を強め、顔を耳元に近づけた。
「美優さんが他の人に触られんの嫌です。俺だけがいい。」
私にだけ聞こえる声で呟いたリエーフは私を床に降ろし、そっと座らせてくれた。そして頭にぽんと手を置くとにこりと笑う。
「俺、黒尾さんに負けないように頑張ってくるんで見ててください!」
そう言ってリエーフは首からかけていたタオルを私に渡し、クロの元に走って行った。私はリエーフから受け取ったタオルに顔を埋める。ふわりと香るリエーフの香りにドキドキが止まらない。
だめだ。
蓋をしていた気持ちが溢れた。
私、リエーフの事、好きだ。
自覚しないようにしてた。
きっと気づいたら気持ちを抑えきれなくなるから。
一度自覚してしまうと今まで何気なくしていたことでさえも緊張してしまう。
いつの間にか目で追っている。
1つ1つの仕草にときめく。
ドキドキが
胸の高鳴りが止まらない。
ドキドキしすぎて息が苦しい。
私はこんなにリエーフのこと好きだったんだ…