第7章 夏合宿1日目。
バスが動き出すとみんなはイヤホンで音楽を聴き出したり、朝食を食べたりと各自やりたい放題している。
『リエーフ、朝ごはんは?』
「うちから美優さんの家に行くまでに食べてきました!」
『そっか。じゃあお腹空いてないね。』
「…なんすか?もしかして朝ごはん作ってくれたりなんか…」
『どうしよっかなぁ。』
リエーフは待てを強要された犬のようにしょぼんとした顔をしている。その顔がなんかかわいくてついつい笑ってしまった。
『朝、荷物持ってくれたからどうぞ?』
私は使い捨てできるタイプのフードパックをカバンの中から取り出しリエーフに渡した。
『車の中でも食べやすいものにしたんだけど…って聞いてないな』
「いただきまーす!」
リエーフの目にはお弁当のおいなりさんしか写っていないみたいだ。ちなみに今日のメニューは、おいなりさん、出し巻き卵、1口サイズのハンバーグ、じゃがボール(ポテトサラダを作った後丸めてフライパンで焼いたもの)、あとは彩りを考えてブロッコリーとプチトマト。
自分の分の蓋を開けている間にリエーフはさっさと手でつまみながら食べていく。
『フォーク渡したでしょ?』
「手の方が早い!」
食べる速さ競争してるわけじゃないんだって…
「だって美優さんのご飯うまいんだもん。1口食べたら止まらない。」
『ご飯粒ついてるよ?』
体はおっきいのに子供みたい。ご飯粒を取ってあげるとリエーフは当たり前のように私の指から直接ご飯粒を口に運ぶ。
「ごちそうさまです。」
指先に触れる柔らかな感触。いちいちこんなことで赤面してたら身がもたない…そう思うのに顔の火照りはなかなか収まってくれず、私は自分のお弁当を食べることに集中した。