第49章 さくら、ひらひら。
「それからも何かって言えばマサちゃんマサちゃんって問題抱えて俺んとこくるし…
でもさ、いつからかものすごく笑うようになったんだ。
いつも1人、周りを寄せ付けないみたいな顔してたやつが笑ってんの。」
あ、それって…
「お前だ、灰羽。」
「え?俺?」
急に名前を呼ばれびっくりしてるけど…
そうだね。
私、リエーフといるようになってからよく笑うようになったね。
思い出すように笑えば、隣からおっきなあったかい手が私の頭を撫でる。
「1番の心配だったお前が笑顔で卒業していくのが俺は1番嬉しい。」
マサちゃんが優しく笑う。
『マサちゃん…ずるいよ…』
泣かないって
笑顔で卒業するって決めたのに…
必死に歯をくいしばるけど、ひとつ、ふたつ、瞳からなみだがこぼれ落ちる。
『っ…ふっ…』
「じゃあさっさと渡すから灰羽のところに行っちまえ。」
『マサちゃ…』
いっぱいいっぱいワガママ言ってもしゃーねーなって笑ってくれたマサちゃん。
きっとお兄ちゃんがいたらこうだったのかなっていっつも思ってた。
気持ちに応えられなくてごめんなさい。
それでも私、マサちゃんのこと、先生として大好きだったよ?
『正嗣せんせ…さんねんかんっ…ありがとっ……ございました…』
精一杯の感謝を込めて深く深く頭をさげる。
そして証書を受け取り、リエーフの方を向くと手を広げ待ち構えているリエーフの胸めがけて私は走った。