第5章 初!合宿。
空いてた席はクロとけんまの隣だった。
お盆を置いて椅子に座ると早速クロが食事の量に文句を言ってくる。
「美優も研磨も食わなさすぎ。そんなんで体力持つのかよ。」
『私、動いてないし。』
「おれ、食べたくない…」
私よりも確実に動いているはずのけんま。それなのに食べたくないってことは、もしかして暑さでバテちゃったかな…
『けんま食欲ない?食べれそうなのなにか作ってこようか?』
隣の研磨に体を向けて問いかける。調理室の鍵ならすぐに借りれるだろうし、明日の合宿の後昼食は作るつもりでいたから材料は買ってある。問いかけにけんまは首を横に振った。
「…大丈夫。クロとかリエーフが食べ過ぎなだけだから。」
食器を見れば、驚きの量を食べる2人に思わずゲンナリしてしまう。
『…確かに。』
「リエーフと一緒にすんな!こいつは食い過ぎ!」
「だって腹減るんすもん!いつもより動いてるし!」
リエーフは人より大きいからその分エネルギーが必要なんだろう。
自分の中で納得させていればこれだって足りないんすよーとぼやくリエーフ。
『じゃあ、これ食べる?』
リエーフに差し出したのは、リエーフの好物おいなりさん。
頑張ってるご褒美にあげようかなってさっき貰ってきていたもの。
それを見たリエーフの瞳はきらっきらに輝き出す。
「やっぱり美優さん好きっす!美優さんあーん!」
リエーフはにこにこと笑いながら大きく口を開ける。
『自分で…って言っても聞かないんだよね…』
私は席を立ち、向かいに座ったリエーフの口においなりさんを入れてあげると、そのまま齧り付き幸せそうに口をもぐもぐしてる。
幸せそうな顔に頬を和らげるとクロのため息が聞こえてきた。
「なぁ…お前らほかの学校の奴らもいるんだからいちゃつくのやめろって…」
『いちゃついてない!まず付き合ってないし!』
「美優がそう言っても、周りからはそう見える…」
クロへの否定の言葉を吐けばけんまが口を出す。改めて周りを見渡すと、やっぱりというかなんというか私とリエーフは注目を浴びていた。
その目線に気づいた瞬間一気に恥ずかしくなった私は、椅子に座り残っていたうどんを食べることに集中した。