第5章 初!合宿。
「みゆさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあん!」
練習後、早速リエーフが駆け寄ってくる。練習でかいた汗をそのままに走ってくる姿にタオルを渡そうとするけれど、リエーフは御構い無しに抱きついてくる。
肌に触れるTシャツは汗でべっちゃりだ。
『いやぁぁぁぁぁぁぁあ!』
「美優諦めろ。こいつ引っぺがすのは無理だ。」
必死に抜け出そうとする私を一瞥すると、クロはタオルで汗を拭きながらさっさと食堂に向かっていった。
『汗臭い…』
汗にまみれ泣きそうな私のことなど気にもせず、リエーフは私の手を掴んでずんずん歩いていく。
「一緒にご飯いきましょー!」
『リエーフ話聞いてぇぇぇ!』
結局私はリエーフに引っ張られ食堂にたどり着いた。
リエーフの態度は改めて告白された後も変わらなかった。
毎朝、私の作ったお弁当を食べて、お昼も教室まで迎えに来てくれて一緒にご飯を食べる。
放課後はバレー部に差し入れを作る時は片付けを手伝ってくれるようになったし、最近は差し入れがない時は私が勉強しながらリエーフを待つようになった。
変わらないなりにも少しずつ変化してる。
それでも、やっぱり…怖い。
私は顔見知りの食堂のおばちゃんに冷やしうどんとおいなりさん、サラダを頼む。リエーフはラーメン大盛りにチャーハンのセットを頼んでいた。
運動後だけれどもどんだけ食べるのよ。
ご飯を待っている間、私はリエーフに話しかけた。
『リエーフ最近頑張ってるね。前より上手になってる。』
「でしょ?俺、音駒のエースっすから!」
自信満々に言うリエーフに後ろからチョップが落ちる。
痛みに悶える姿に後ろを見れば、現エースの山本が手を振りかざしていた。
「おいリエーフ。守備もロクにできない奴はエースとは呼ばないんですぅー!」
『そうだよね。調子乗せちゃダメだよね、山本。』
私が山本に話を振れば、山本は体を硬くして一気にキョドりだす。
「えっ!あ…はい……」
ねえ、山本…私あなたと関わり始めて2年目よ?
女子に免疫ないのはわかるけど少しは慣れて…
山本は挙動不審ながら食事を受け取ると適当に席を見つけて座りにいった。
それを見ていると食堂のおばちゃんに声をかけられ食事を受け取った。
「美優さん!あそこ!空いてる!」
リエーフは自分の食事を持ち、先に進む。
私は少し早足で先に進むリエーフの背中を追いかけた。