第44章 春の高校バレー。
ざわつく会場。
色とりどりのジャージ。
その中で目立つ真っ赤なジャージの音駒。
後は、何者にも染まらない、くろ。
そう、烏野。
「あ、けーんまー‼︎」
くろの中のオレンジ。
しょーよーがけんまを見つけぴょんぴょん飛びながら手を振ってくる。
びくりと体を震わせたけんまは私の影に隠れようと私の後ろに回る。
…隠れてないよ?
はみ出てるよけんま。
黒の集団はぞろぞろと赤に近づいてきてわちゃわちゃと話をし始めた。
私は、それを傍観している2人のマネージャーに近づいた。
『清水ちゃん、仁花ちゃん久しぶり。』
「美優さん!お久しぶりです!」
「久しぶり。」
やっぱり烏野マネは天使だ…
『清水ちゃん、最後の試合、頑張ろうね。』
「うん。がんばろう。」
清水ちゃんと2人で笑いあうと、隣の仁花ちゃんの目から涙が噴き出す。
「最後…しゃいご…」
「わっ…仁花ちゃん泣かないで …」
「泣いてないです!目にホコリが!」
『それ痛い痛い!』
そんな話をしているとお互いの主将がみんなを呼び、自分達の席にうごきだす。
『お互い、全力で頑張ろうね?』
「うん。」
そう誓い合って私達はお互いのチームにもどる。
『勝つ』という強い想いを胸に宿らせ。
トントン
肩を叩かれ振り返れば少々ふてくされたような蛍。
『ん?どうしたの?蛍。』
「久しぶり…とかないんですか…?美優さん。」
『こないだ会ったばっかり…』
ぐいっと肩を引き寄せられ腕の中に収まると、ぽそり、耳元に振ってくる声。
「会いたかった…デス。」
『蛍がものすごく素直だ。』
「たまには…ネ?
そんなに睨まなくてもいいじゃない。灰羽。」
振り返ればリエーフのむっとした顔。
蛍の腕から抜け出るとリエーフのもとに向かう。
「軽い挨拶だって。」
『ほら、蛍の戯れなんて気にしないで行こう?』
「はい…」
蛍が私達に背中を向け烏野の方に向かったのを見送ると、私はリエーフの手を引きながら赤いジャージを追いかけた。