第42章 ねんまつねんし。〜初詣とその後。〜
「蛍はどう?」
パンを選んでいると不意に明光さんが呟く。
『蛍…ですか?』
「アイツ、意地っ張りだからさ。昔はにいちゃんにいちゃんって後ろ追っかけてきてたのにな。」
そう言いながら懐かしむように、明光さんは笑う。
『…いい子ですよ?蛍。
素直になれないだけで、いいところいっぱいあります。
いい子すぎてたまに辛そうなのでたまの息抜きに連れ出しちゃってるんですけどね?』
連れ出す距離が遠すぎますよね?なんて笑えば、明光さんは蛍と同じ顔で笑う。
「そのくらいいいよ。また仲良くしてやってな?…って美優ちゃん今年卒業なんだよな。」
『そうですよ?クロ…黒尾と木兎もですけど。でも、卒業してもきっとまた集まるんじゃないかな…』
カンですけどね?
そう付け足せば明光さんがにんまり笑う。
「じゃあ、そんなやさしい美優ちゃんにはお兄さんが美味しいパンをご馳走してあげよう!」
『え!いやいや。大丈夫ですよ?』
「いーのいーの。お兄さんに奢らせなさい!」
そういうと明光さんは私のおぼんに乗っていた食パンを一斤取り、レジに向かって歩き出す。
それを私は小走りで追いかけた。