第41章 ねんまつねんし。〜第3体育館組、再来。〜
歌合戦も後半に移り、あと2時間もすれば新しい年を迎える、そんな時。
『そろそろ年越し蕎麦の時間…かな?どのくらい食べれそう?』
「「大盛り!」」
「「普通。」」
「少なめで」
『おっけー。じゃあ作ってくるね?』
そういい、私はキッチンに引っ込む。
ほうれん草は茹でてあるし、海老は下拵え済み。
刻みネギも用意したし、かまぼこも鶏肉もある。
あとは卵…かな?
とりあえず天ぷらから。
衣は冷蔵庫に入れて冷やしておいたからあとは揚げるだけ。
油が入った鍋を火にかけ、温度が上がるのを待っているとぺたぺたと廊下を歩く音。
「みーゆさん!」
『リエーフ?どうしたの?』
「横で見てていいですか?」
にこり、リエーフが笑う。
『いいよ。油使うから気をつけてね?』
はーい。と返事をし、リエーフは入口の壁に寄りかかった。
菜箸で油の温度を確認したあと、海老に衣をつけ、油に投入。
それをリエーフはキラキラした目で見ていた。
「海老天!」
『そう。縁起がいいんだよ?海老って。』
綺麗に揚がった海老をペーパータオルに乗せ、油を切る。
第2弾を揚げているとき、リエーフが近づいてきて私を後ろから抱きしめた。
ぱちん!
こっそり伸びたリエーフの手を少し強めに叩く。
「いって!」
『つまみ食いは許しません!』
海老は人数分しかないんだから!とリエーフに言えばしゅんとするリエーフ。
『海老が揚がるまで待ってて?』
そういうと、からりと揚がった海老を油からあげる。
全てをペーパータオルに乗せると他の具材の準備…ということで冷蔵庫に材料を取りに向かう。
食材を取り出し、切る。
しょぼーんとしたリエーフを呼ぶと私は、ひょいっと口に何かを放り込んだ。
「…かまぼこ…?」
『そう。端は毎回食べるか自分用なんだけど今回は特別…ね?』
そう、伝えればリエーフはにこり笑いながら私の背中に抱きついた。
「やっぱり美優さん大好きです!」
『じゃあ、お蕎麦運ぶの手伝ってね?』
「はーい!」
遠くからクロの歓喜の声。
そして聞こえるハイテンポなダンスナンバー。
『やばっ、急がなきゃ!』
歌合戦が終わる前に食べ終わらせなくちゃ!
そう思いながら私はお蕎麦を作ることに専念したのであった。