第37章 ネコとヘビ〜ねこま、ピンチをチャンスに〜
リエーフがワンタッチしたボール。
勢いが殺されぬまま後ろにいたクロの手を弾いた。
クロの顔が歪む。
指を気にしながらコート外にクロは移動。
芝山が代わりに入った。
試合終盤、クロまでいなくなるなんて…
クロの怪我は爪が割れて血が出たみたい。
血が止まればすぐにコートに戻れる。
でもこの終盤に…
クロが下がったのを見た戸美の応援は今のうちだと言わんばかりに囃し立てる。
持ちこたえてほしい。
クロが戻るまで。
そんな中、リエーフがブロードをきめ、セットポイントをとった。
『ラスト1点!とるよー!』
これさえ取ればっ…!
でも、戸美の選手も上手い。
ストレートにリエーフのブロックがいるのを見て瞬時にクロス打ちに変えてのスパイク。
戸美に得点が決まりデュースに。
祈る両手には力がこもる。
もう少し、
もう少し。
祈り、コートを見つめるとリエーフの表情が変わったような気がした。
それからはもう、両チームとも必死に粘る。
山本が決めて、音駒がリード。
拾って、打って
また拾って打つ
ハラハラする気持ち。
リエーフがブロックするために飛ぶ。
凄い気迫。
活躍できないと落ち込んでいた試合前とは違う。
敵を射殺すような目線。
身震いするほどの殺気。
戸美の選手も同じことを思ったのかとっさにクロスに打つ方向を変えた。
そこに待ち受ける芝山。
完璧なレシーブ。
勢いを殺したボールを研磨がトス。
勢いよく山本がスパイク。
ブロックを弾いたボール。
フェンスを乗り越えボールを追う大将くん。
追いつけず床をはねたボール。
ホイッスルが響きわたる会場。
音駒の応援が歓喜の声を上げた。
あかねちゃんとアリサさんは抱き合って喜ぶ。
その横で私は地面に崩れ落ちた。