第36章 ネコとヘビ〜春高代表決定戦2試合目〜
試合は進み、あと1点で同点というところまで来た。
福永が打ったボールはラインギリギリで入ったようで点が並んだ。
音駒の応援団も両手を上げて喜ぶ。
『福永ナイス!』
喜んだのもつかの間。
線審が審判に呼ばれ走り、何か話をしている。
「? どうしたんだろ?」
不思議そうなアリサさん。
「多分今、ボールが落ちる瞬間が選手で隠れて線審からちゃんと見えなかったんだと思う。」
『大将くんうまい具合にラインの上だったしね?』
どんな判定が出るのかドキドキしながら見ていると、先ほどの判定は覆されアウトの判定。
音駒の観客席からはブーイングが起こり、戸美からは喜びのコールが起こる。
「えーっ!INじゃないのー⁉︎」
アリサさんが落胆の声を上げる。
「高校にはチャレンジシステム無いもんね…」
クロが意見を通し、主審に訴えても結局ジャッジは変わらず結局戸美に1点が入った。
コートでは戸美の人達が喜び、周りが拍手をする。
ふと、隣を見れば伏し目がちのアリサさんが私が思っていたことをぽそり、呟いた。
「…なんだか、嫌な雰囲気…」
なんだろう。
さっきも思ったけど、会場の空気が戸美に傾いている気がする。
それでも、音駒のみんなは空気に飲まれることなく丁寧にボールを返し、攻撃を仕掛ける。
山本がストレートでスパイクを打つがジャッジはアウト。
「あーんおしいっ」
「お兄ちゃん、ストレートはまだ不安定なんだよ…」
『頑張って練習はしてるんだけどね…』
山本がコートを振り返りみんなに謝る。
歯をくいしばり眉間にしわを寄せ悔しそう。
なんで…?
なんで今日はみんなそんなに焦っているの?
山本も、リエーフも。
春高の切符をかけた大事な試合だけど…
それでも何かおかしい。
どうしたの?みんな。