第35章 ねことふくろう〜代表決定戦1試合目〜
ふ、と息を吐き出したクロは話を続けた。
「確かに、ブロックとかドッカンドッカン決めたら気持ちイイしヒーローだよな。」
さりげなくけんまがクロの影から注意。
「リエーフはまず空回りをなんとかして。」
それを聞いたリエーフは考えていることを口に出す。
「音駒はチームワークのチームだから、輪を乱しちゃ駄目だってわかってるんですけど…!」
「お前ちゃんとそんなこと考えてたのか!」
『クロ、茶化さない。』
思いつめた顔をするリエーフにぽつり、ぽつりとまたクロは話す。
「まあ、大事だな。チームって複雑だからな。
人が複数いて、ちゃんと力を合わせるって結構難しい。
別に「出る杭打つべし!」っていうんじゃねぇの。」
そこまで言うとクロは難しい顔をして首を傾げた。
「なんつーのかな。んーーー…」
少し考えたクロは、まああれだとつぶやくと腰に手を置き、言う。
「チームワークがはまる瞬間てのは、たぶんお前が思ってるよりずっと気持ちいいぞ。」
不思議そうな顔のリエーフを置いて、クロは行ってしまった。
残ったのは私とリエーフ。
『リエーフ…?』
「美優さん…ごめん…負けた…」
『負けちゃったものはしょうがない。次頑張るしかないよ。それより…』
私はリエーフに近づくと、リエーフの下を向いてた顔を上げた。
「美優…さ…っていででででで!」
『チアに鼻伸ばしてたでしょ!試合始まる前!』
「ごめっ!ごめんなさーい!」
両頬をグイグイ引っ張る。
ある程度のところで指を離すと両頬をさするリエーフ。
「美優さん、思いっきり引っ張ったで…しょって美優さん…?」
『負けないで…』
自分でもわかる。
ぐっと歪んだ顔。
潤む瞳。
不安なのは私じゃない。
プレーしてるみんなだ。
それでもやっぱり強く念じてしまう。
勝って。
勝って。
今のメンバーで勝って春高に行きたいって
すごく、すごく思う。