第3章 嘘だ、私は信じない。
結局最後の食器を洗い終わったのはいつもの帰宅時間を大幅に過ぎたころだった。
流石に遅くなることが予想できたので、延長届はクロにお願いして出してもらっているけれど、こんなに遅くなるとは思わなかった。
「終わった…」
『リエーフお疲れ様。』
使った台拭きや布巾を洗濯機にかけてきたリエーフにそう声をかけるけれど、リエーフは涙目でしゃがみこむ。
「はらへった…」
『次摘み食いしたらこうなるからね?』
「……ごめんなさい…」
私の注意を素直に聞きシュンとしたリエーフの前から自分の鞄の所に向かう。
そしてリエーフに朝渡したお弁当の容器を鞄から取り出し渡した。
「美優さん?これ…」
『開けてみて?』
リエーフは私からお弁当を受け取り蓋を開けると、しょぼんとしていた顔が一気に輝き出す。中にはさっき作った唐揚げ、竜田揚げ、出し巻き卵が入れてある。あとはラップで包んでおいたおにぎり2個を鞄から出し、リエーフに渡した。
『ちゃんと手伝ってくれたからご褒美。流石に残ってくれてる先生に申し訳ないから外に出たら食べよ?』
「やっぱり美優さん大好きです!」
おかずが残っていたのがよっぽど嬉しかったのかリエーフは私に抱きついてくる。
そんなリエーフの頭を撫でながらも帰り支度を始めるが、いつまで経ってもリエーフは私を離そうとしない。
『リエーフ、外出るよ?』
「はいっす!」
私は抱きついたリエーフを引っぺがすと、調理室の鍵を閉め下駄箱に向かって歩き出した。