第35章 ねことふくろう〜代表決定戦1試合目〜
会場にみんなが入っていく。
でも私は体育館には入れない。
自分が決めたこと。
だけどみんなが軽々越えていく一歩を私は踏み出すことができない。
「美優さん?」
顔を上げれば体育館の中にいるリエーフが私のことを見ていた。
リエーフだけじゃない。
音駒のみんなが私を見ている。
『…みんな、頑張って!』
私は笑った。
不安なのは私じゃなくてみんな。
私にできることはみんなを笑顔で送り出すことだけなんだから。
『いってらっしゃい!』
みんなは口々に返事をして中央のコートに顔を向けた。
「美優さん。」
声をかけてくるリエーフを見れば、リエーフはふわりと微笑み、指輪の付いてない自分の指に自分の唇を軽く触れさせた。
__好きです。
__信じて、待っていてください。
そう言われている気がして、私は自然と笑顔になる。
みんなの試合を見るため、私は観客席に急いだ。