第35章 ねことふくろう〜代表決定戦1試合目〜
「いつも通りハイレベルな守備とチームワーク。そして…」
声がした方を振り返れば他校の生徒。
このジャージは…
戸美(のへび)学園…?
唇を舐めながらニヤリと笑うその人。
「決定力に欠けるネコチャン。」
「ハァァー⁉︎」
戸美の人に山本が突っ掛かりに行く。
それを止めようとクロが山本に声をかけるが、身長と髪型について突っ込まれ結局山本と一緒に突っ掛かりにいった。
海君が呆れた声を上げている。
『ねえ、やっくん。あれ、だれ?』
「あれは、戸美の主将の大将 優(だいしょう すぐる)
毎回黒尾に絡みにくるんだよ。」
『へえ…』
ぎょろり
大将くんの細い目が私を見る。
「へえ…?万年マネ不足のネコチャンにもやっとマネ入ったんだ…」
品定めされるようにじいっと見る目。
『音駒のマネージャーの椎名美優です…』
「美優チャン…ね。よろしく。」
『…よろしく。』
「つーかさー、お前ミカちゃんにフラれた傷は癒えたの?
試合ダイジョブなの⁇」
クロ…なんでそんな情報知ってるのよ…
「は⁉︎ちょ、はぁ⁉︎フラっ、フラれてねえし!フったんだし!
つーか何で知ってんだよ!」
本人から聞いたんじゃないの…
本当、どこ情報よ。
嫌な笑いをしながらクロが大丈夫ー?なんて大将くんに絡んでいると、大将くんに影が落ちる。
天井に埋まる蛍光灯からの光が遮られている。
大将くんの後ろには、リエーフがいた。
「音駒の”いつも通り”は前とは違うっスよ」
明らかな挑発。
いつもと纏う空気が違う。
大将くんの細い目がさらに細くなる。
目線の先にはリエーフ。
「リエーフ、うんこ長えんだよ!」
やっくんがリエーフにそういうとリエーフはさっきまとっていた空気を一掃し、いつもみたいにやっくんに絡みに行った。
っていうかやっくんお下品。
それに乗っかるリエーフもお下品。
それを見た大将くんは興味がなくなったかのように目線をそらす。
「じゃあ…」
「「決勝で会おうぜ」」
主将同士が指を刺し合い威嚇する。
それと同時に、遠くから聞こえるホイッスル。
それは女子の試合が終わること。
そして、音駒の試合が始まることを意味していた。