第34章 春高代表決定戦、そのまえ。
『もしもし?こんな時間にごめん。』
「別に?どうせリエーフがガンガンメッセージ送ってたんだろ?」
『御察しの通り…』
「…で?部活の時のことだろ?何聞きたい?」
あの時の真剣モードはどこへやら。
からかい半分で質問を投げかけてくるから私も質問をした。
『じゃあ…いつから?』
「高1の冬。」
『なんで私?』
「しらね。いつの間にか目で追ってた。」
『合宿の時のは?』
「わりい、あれは無意識っつーかなんつーか…リエーフのものになる前に…ってのはあった。」
『反省は?』
「してねえ。」
掛け合いのテンポが気持ちいいくらいでついつい吹き出すと、電話の向こうでクロがぶひゃひゃと笑う。
『クロ…ありがと。』
謝られんの、好きじゃねーんだわ。
合宿の時に言われた言葉。
だからごめんじゃなくてありがとう。
「まあ、リエーフからお前を奪うのは無理だわ。」
『クロが奪いに来てもどシャットしちゃうねって…明日の試合、最初って…』
「ああ、梟谷…木兎んとこだ。」
梟谷学園。
木兎は全国5本の指に入るスパイカー。
その木兎にトスを上げる赤葦も強豪校の中で2年で試合のメインメンバーに入るほどの実力。
「勝つぜ。木兎倒して、サクサ倒して、東京でトップに立つ。
烏野がウシワカ倒したんだから俺らも負けらんねえ」
『そうだねー。私を東京体育館に連れて行って!なんてね?』
そう笑いながら言うと電話の向こうがシンとなった。
『クロ…?』
「連れてってやるよ。」
真剣な声。
いつもより低い声で紡がれる言葉は自信に満ちていて、
すごくすごく恰好よかった。