第34章 春高代表決定戦、そのまえ。
「ほら、さっさと荷物積んじまえ。」
大会会場に持っていく荷物を車に積んでいく。
ちなみに車は直井コーチのもの。
みんなはどんどん車の前に荷物を持ってきて、積む。
これを見ると明日は大会なんだって気持ちがきゅってなる。
ばたん。
車の後ろのドアが閉まる。
「じゃあミーティングするぞー。体育館戻れよー。」
クロに促され体育館に戻る。
私はみんなの後を追って体育館に戻る
つもりでいた。
「なあ、美優。ちょっといいか?」
『どうしたの…クロ。』
ちょいちょいと手招きされてクロの方に走る。
体育館と校舎の影。
みんなは先に体育館に行ったから周りには誰もいない。
『忘れ物?他に何か必要なものあった?』
そう、クロに問いかけたが返事はなかった。
返事の代わりに
私は抱きしめられていた。
『クロっ!』
「少し…黙れよ…」
胸を押し、離れようとするが力が強く余計に胸に引き寄せられた。
『クロ「好きだ…」
冗談…じゃない。
いつもの飄々とした雰囲気はない。
引き寄せられた胸。
心臓の鼓動がはやい。
「少しだけ、こうしててくれねーか?」
ぽすり
胸に顔を埋める。
ふわり香る柔軟剤の香り。
腕の力。
顔が当たる体の位置。
全てがいつもと違う。
「ガラにもなく緊張してるんだわ…」
『ん…』
「返事もいらねーし」
『ん…』
「気持ちの整理したかっただけだから。」
「笑っててくれよ。
お前は俺達がコートに向かう時に笑ってて欲しい。
それだけで頑張れる。」
『ん…わかった。』
そう言って離れて行った体。
先を行くおっきな背中。
走って
背中に飛びついた。
『私…なにもできないけど…見てるから。
頑張って。』
「お前さ…何もわかってねえよな…」
体に回した手を引かれ
引き寄せられる。
唇に熱い熱
見つめる瞳
キスされたって気づいた頃にはクロはずっと前を歩いていた。
「ほら、置いてくぞ?」
いつもの、ともだちの笑顔で私を見てた。