第33章 ThankYouForComingToTheWorld
『お待たせ?』
部屋から戻ると私はリエーフの隣に座る。
『リエーフ…これ…誕生日プレゼント…』
おずおずと渡すと、リエーフの顔がぱああっと輝く。
「まじすか!ありがとうございます!」
手のひら程度の小さな袋。
リエーフはゴソゴソとラッピングを開いて袋の中に手を入れ引き出す。
「…?プレート?」
そう。
2㎝×5㎝程度のシルバーのプレート。
右端にはバレーボール、左端には筆記体のイニシャル。
そして、何かを通す穴が両端に2つ。
私は1度リエーフからプレートを受け取るとリエーフの手の甲を上にして手首にプレートを乗せた。
そして革紐を通し、ブレスレット用の金具を通し結ぶ。
「え…?これって…」
『作ってみたの…気に入ったのが見つからなくて…』
「え?どういうこと?作った?」
すごく混乱してるリエーフに丁寧に説明する。
『最近ね?シルバーアクセが簡単に作れるキットが売ってるの。それ買って作ったの。』
下手でしょ?と呟くとリエーフは横に首を振る。
「世界に1つしかないんですよね?嬉しいっす!」
腕につけたブレスレットのプレートに口付け笑う。
『袋の中にもう1つ…あるんだけど…』
私がそう言うと、リエーフは先ほどの袋に手を差し入れる。
取り出したその手には、小さなフェルトのマスコット。
それは音駒のユニフォームの形を模していて、背中には11の数字が付いている。
『作ったの….春高…頑張って欲しいから…』
少しでも応援したい。
自分でもベタだなって思った。
それでも、作る手は止まらなくて…
『実は出来たの今日の朝で…何回か失敗しちゃって…1番うまくできたの。』
あははと笑うと、リエーフは私の両手を掴む。
「だからこんなにボロボロなんですね?」
眠気で何回針を指に刺しただろう。
指先は絆創膏だらけ。
『お裁縫は苦手…っていうか…眠気でぐっさぐさ…』
「嬉しいですけど、あんまり無理しないでくださいね?怪我されるのは…嫌です…」
複雑な顔をして笑うリエーフ。
『だって…誕生日に間に合わせたかったから…』
少し下を向きながら呟くと「ああ、もうっ」というリエーフの声。
顔を上げれば体はリエーフの方に引き寄せられる。
「嬉しすぎて言葉が見つからない…」
抱きしめられている腕の強い力が嬉しさを表しているようで私も嬉しい。