第31章 たたかい。
試験終了後、私はバレーの試合の会場に走っていた。
試験用に下ろしたいつもより長いスカート丈がもどかしい。
体育館の入り口をくぐり、ローファーから内履きに履き直すけれど、ちゃんと履くのももどかしくかかとを潰して走り出す。
観客席への階段を勢いよく駆け上がり、光の導く方へと出た。
まさに試合は今終わったようだ。
ホイッスルが体育館に鳴り響いた。
勝った?負けた?
近くにいた拡声器を持った2つ縛りの女の子に話しかける。
『突然ごめんなさい。音駒高校の結果って知ってますか?』
すると拡声器の女の子は大きな目を私に向けたかと思ったら、ニカリ笑った。
「代表決定戦出場決定ですよ‼︎」
『本当⁈』
思わず落下防止の手すりから身を乗り出せば、目立つプラチナがコートから出るのが見える。
汗だくで笑うリエーフ。
嬉しくてつい、私は叫んだ。
『リエーフー‼︎おめでとー‼︎』
感極まって、人目を気にせずぶんぶん手を振れば気づいたリエーフも両手をぶんぶん振り回し…やっくんに背中を蹴られた。
「あの…」
拡声器の女の子が不思議そうに私を見ていた。
『あぁ、ごめんなさい。私、兼任で音駒のマネージャーやってたので…感極まっちゃって…』
「もしかして…しいなさん…ですか?」
くりくりの目が私を見る。
なんか見たことあるような…気が…
『そうだけど…なんで私の名前…?』
ぱああと笑顔になる顔。ふわふわの髪の毛がぴょんぴょん跳ねる。
「はじめまして!山本あかねです!兄がお世話になってます!」
やまもと…
『山本の妹さん⁈』
かわいい…!
私も改めて自己紹介をしていると、コート内の音駒バレー部は出口に向かって歩いている。
『私、みんなにおめでとう言ってくるね?』
「はい!いってらっしゃい!」
あかねちゃんに見送られ、私は登ってきた階段を再び下り始めた。