第31章 たたかい。
そして放課後、私は体育館に来ていた。赤いジャージに着替えたけんまが体育館に入ってくると目ざとく私を見つけ不思議そうに近づいてきた。
「あれ…美優。明後日試験だから今週来ないんじゃなかったの?」
『リエーフがいっしょに帰ろうって…あ、そうだけんま。』
私は鞄とは別に持っていた紙袋をけんまに見せる。中にはけんまの好物のアップルパイ。もちろんホールだ。
『そろそろ誕生日だから…アップルパイどうぞ。』
私が箱を出せばけんまは普通の人にはわからないくらいに目を見開くと小さく微笑んだ。
「ありがと…美優。美優のアップルパイ大好きだから嬉しい。」
つられて私も笑顔になる。
「あーーーー!」
びくりと私とけんまの肩が跳ねた。途端にけんまの顔が不機嫌になる。
「うるさい…リエーフ。」
「なんで研磨さん美優さんに何かもらってるんすか⁉︎」
『けんま誕生日なの!誕生日プレゼントにアップルパイ焼いたからプレゼントしただけ。』
リエーフはぷくーっと頬を膨らませる。
「俺だってもうすぐ誕生日なのにー!」
『リエーフはもう少しあとでしょ?』
「でもー…」
『ちゃんとプレゼントもご飯も用意するから…』
絶対ですよ!なんて言いながらリエーフは体育館の中ほどまで走り、クロに今日の練習のメニューを聞いている。
さて、そろそろ部活も始まるし、私も流れ弾に当たらないように移動するか。
私は鞄を持ち、体育館の壇上に移動した。